今回は空調設備工事で主に使用する配管材について、その規格、用途について解説していきます。
配管材の知識は、配管材の手配、施工時の留意点を指導する場合など施工管理の仕事において重要な知識になります。
それでは解説していきます。
空調設備工事で使用する配管材
空調設備工事で使用する配管材について公共建築工事標準仕様書より、その配管材とその用途について整理してみました。その整理結果が以下となります。それぞれについて詳しく解説していきます。
配管用炭素鋼鋼管SGP(JIS G 3452)
配管用炭素鋼鋼管は空調配管の中でも最もポピュラーな配管です。
配管用炭素鋼鋼管は白ガス管と黒ガス管があり、白ガス管は内外面が亜鉛メッキで塗装されており、黒ガス管は亜鉛メッキはなく、外面の1次防錆処理をしたものになっています。
白ガス管 | 内外面に亜鉛めっきが施されている(亜鉛付着量400g/m2以上) |
黒ガス管 | 亜鉛メッキはなく、外面に一次防錆塗料が塗られたもの |
白ガス管は主に空調用途では冷却水、冷温水配管に使われ、黒ガス管は蒸気、油、ブライン(不凍液)の系統に用いられます。
蒸気に白ガス管が使われないのは亜鉛メッキが60℃以上の高温にさらされた場合、メッキが剥がれてしまい、結果として配管が閉塞してしまうためです。
基本的に1MPa以下の圧力の系統で使用し、それ以上の圧力がかかる場合は次に紹介する「圧力配管用炭素鋼鋼管STPG」を用います。
圧力配管用炭素鋼鋼管STPG(JIS G 3454)
350℃以下の蒸気、高温水などの圧力の高い(1MPa以上)系統では圧力配管用炭素鋼鋼管STPGを用います。STPGにはその引っ張り強さにより、STPG370、STPG410がありますが、空調ではおもにSTPG370が使用されています。STPGにも白ガス管、黒ガス管の2種類があります。
SGPとの主な違いとして、成分が挙げられます。SGPのJIS規格にはP,Sの規定しかありませんが、STPGにはC,Si,Mn,P,Sの規定があります。規定の詳細は下記になります。
C | Si | Mn | P | S | |
SGP | – | – | – | 0.040%以下 | 0.040%以下 |
STPG370 | 0.25%以下 | 0.35%以下 | 0.30〜1.00% | 0.040%以下 | 0.040%以下 |
また、STPGの中にもスケジュールという肉厚の違いによる区分がありSch10-80まで区分されており、肉厚によって最高使用圧力が異なります。使用する際はスケジュール番号による最高使用圧力の違いについて留意する必要があります。
標準仕様書には冷温水、冷却水の系統では白管のSch40、蒸気、高温水の系統では黒管のSch40,80を使用するように記載がありました。
水配管用亜鉛メッキ鋼管SGPW (JIS G 3442)
白ガス管よりも亜鉛メッキの付着量が多い配管材で、白ガス管が400g/m2であるのに対し、SGPWは600g/m2以上の亜鉛メッキ付着量になっています。
用途は白ガス管と変わらず、冷却水、冷温水となっています。
水道用硬質塩化ビニルライニング鋼管 SGP-VA (JWWA K 116)
耐食性を確保するためにSGPの内面に硬質塩化ビニル管を挿入し、密着製造したものであり、仕様の違いにより、SGP-VA、SGP-VB、SGP-VDの3種類があります。空調用途ではSGP-VAが主に用いられます。
強度に関しては鋼管と同じ強度を示し、耐食性に関しては塩化ビニル管の特性を示す、いいとこ取りの配管となっています。
使用できる流体の温度、圧力はそれぞれ、40℃、1MPa以下であり、基本的に冷却水用途で腐食に強いので主に開放系の冷却塔系統等で用いられます。
一方で鉄製の機器、バルブ等と接続すると集中腐食を起こすため、使用する場合は注意が必要です。
水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管 SGP-HVA (JWWA K 140)
水道用耐熱性硬質塩化ビニルライニング鋼管SGP-HVAは耐熱性硬質塩化ビニル管をライニングさせ、先ほどのSGP-VAよりも耐熱性を向上させた管材になります。
最高使用温度は85℃程度であり、冷温水の系統にも用いることができます。
水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管 SGP-PA (JWWA K 132)
水道用ポリエチレン粉体ライニング鋼管SGP-PAはSGPの管内面にポリエチレン粉体をライニングしたもので用途はSGP-VAと同様で、冷却水系統で使用されます。
一般配管用ステンレス鋼鋼管 SUS-TPD (JIS G 3448)
一般配管用ステンレス鋼鋼管は1MPa以下の圧力で、冷温水や冷却水、蒸気の還水など幅広い用途で用いられます。SGPに比べ薄肉であるため、軽量で扱いやすく、管表面に不動体皮膜を形成するため腐食にも強いです。
デメリットとしては塩素に弱いという点が挙げられます。これは塩素イオンが不動体皮膜を破壊してしまうことに起因します。
また、線膨張係数がSGPの約1.5倍であり、施工時に熱伸縮について考慮する必要があります。特に蒸気配管で使用する際は、伸縮継手やローラー支持など特殊な材料を使わなければなりません。
配管用ステンレス鋼鋼管SUS-TP (JIS G 3459)
配管用ステンレス鋼鋼管は1MPa以上の圧力で、冷温水、冷却水、蒸気の系統で使用されます。
圧力配管用炭素鋼鋼管と同様に肉厚による区分がありSch5-160まであります。
まとめ
今回は空調設備工事で使用される配管材について、その特徴などをまとめました。
管理の中でなぜその管種を用いるのか、なぜこれはダメなのかがよくわかると思います。自分が仕様を決める際は今回示したような特徴を根拠に決めていきたいなと思いました。
今回は冷媒配管については取り扱っておりませんが、内容が多くなりそうなので別のパートで扱いたいなと思っております。また衛生設備工事で使用される管種についてもまとめていきたいなと思います。
コメント