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設備機器の耐震設計 アンカーボルト選定について

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空調・衛生設計
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今回は設備機器を基礎に据付、固定する際のアンカーボルトの選定について、建築設備耐震設計・施工指針を基に解説します。

実際に手を動かしてアンカーを選定するというのは少ないかもしれませんが、アンカーボルトの選定について理解すれば、アンカーボルトの耐震計算書が意味を分かった上で読めるようになったり、仕事上でかなり役に立つと思います。

それでは解説していきます。

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地震時にアンカーボルトにかかる力

設備機器はアンカーボルトによって基礎などに固定されます。(防振架台や鉄骨などに固定される場合もありますが、今回は基礎に固定される場合を扱います。)

この状態で地震が起きると、機器に地震力がかかります。そうするとアンカーボルトに対して、機器が転倒しようとするモーメントによる引抜力、機器が横ずれしようとする力によるせん断力がはたらきます

この場合にアンカーボルトが抜けてしまったり、破断してしまわないように選定すれば耐震設計としてはOKとなります。

つまりアンカーのもつ許容値が、アンカーボルトにかかる地震力より大きければ適切なアンカーボルトが選定できていると言えます。

それでは具体的な手順について解説していきます。

アンカーボルトの選定手順

アンカーボルトの選定はそもそもの地震力を計算する必要があります。その計算については下記の記事にまとめていますので参考にしてみてください。

設備機器の耐震設計 機器に作用する地震力の求め方

アンカーボルトの仮定、許容値の確認

まず、アンカーボルトの仕様固定箇所数を決めます。(仮定)

これは設備機器や固定架台の仕様書にあらかじめボルト穴の数やサイズが決まっているのでそれに基づいて暫定で決めてしまいます。

その決めたアンカーボルトが許容値に満たなければアンカーボルトをサイズアップさせて再度同じ手順を踏みます。

アンカーボルトの仕様と固定箇所数が決まれば、それぞれの許容値が決まります。

この際カタログなどを参考に許容引張応力ft許容せん断応力fsをそれぞれ確認しておきます。

地震時に機器に作用する引抜力Rb、せん断応力τの計算

次に地震力が作用した際の引抜力Rb、せん断応力τを求めていきます。

地震力は基本的にアンカーボルトが受けうる一番厳しい条件で仮定し、耐震計算を行います。

引抜力Rbについて

引抜力は水平、鉛直方向の地震力が同時に機器の重心に作用するものとして計算を行います。
鉛直方向の地震力は機器の引抜力が大きくなる方に作用させます。

重心周りについて、地震力のモーメント(転倒する力)による引張力が一番強い面を探します。それがわからない場合は全ての面について検討を行います。計算式とモデルのイメージ図は下記になります。

Rb={FH×hG−(W-FV)×lG}/(l×nt

Rb:アンカーボルト1本に対する引抜力[kN]
hG:アンカーボルト支持面から機器重心までの距離[cm]
W:機器の重量[kN]
l:アンカーボルトスパン[cm]
lG:圧縮側のアンカーボルトから機器重心までの距離[cm](lG≦l/2)
nt:地震力のモーメントを負担するアンカーボルトの本数
FV:設計用鉛直地震力[kN]
FH:設計用水平地震力[kN]

アンカーボルトの本数ですが、上記の図の検討の場合、lG≦l/2なので、地震力が作用したとき図右側が圧縮側、図左側が引抜側になることがわかります。

もし仮に直方体の4隅をアンカーボルトで固定する場合には、引抜側のボルト2本で地震時の引っ張りを負担することになります。

このように仮定する力や機器の形状によって負担するアンカーボルト本数が変わるので注意が必要になります。

せん断応力τについて

せん断力については基本的に機器を固定するアンカーボルト全てで負担することを考えます。求め方は下式になります。

τ=FH/(n×A)

n:アンカーボルトの総本数
A:アンカーボルトの軸断面積[cm2
FH:設計用水平地震力[kN]

引抜力が負の場合の検討

引抜力が負であった場合(アンカーボルトに引き抜き力が作用しない状態)、許容せん断応力fs地震時にかかるせん断応力τを比較してfs≧τであれば合格となります。

引抜力が正の場合の検討

引抜力が正であった場合、引抜力Rbと許容引張応力ftsについて検討を行わなければなりません。それぞれ解説していきます。

引抜力Rbの検討

先ほど求めた引抜力Rbと許容引抜荷重Taを比較して引抜力が許容値以下(Ta≧Rb)であれば引抜力に関しては合格となります。

許容引張応力ftsの検討

一般的に引張力とせん断力を同時に受けるボルトは引張のみを受ける場合と比べると、その許容値は低下します。(ミーゼスの降伏条件)

なのでそれを加味して比較検討を行わなければなりません。そのときの許容引張応力ftsは下式によって求めます。

fts=1.4ftー1.6τ

ft:許容引張応力(引張を単体で受ける場合)[kN/cm2]
※τ≧4.4kN/cm2の場合fts=ftとなる(SS400ボルトの場合)

τ≧4.4kN/cm2の場合についてはτによる応力低下の影響を受けないためfts=ftとなります。(SS400ボルトの場合)

求めた引張応力ftsと地震力による引張応力(Rb/A)を比較しfts≧Rb/Aであれば合格となります。

以上の引抜力Rbと引張応力度ftsについて検討し、それぞれについて合格であった場合、設備機器のアンカーとして耐震上問題ないと判断されます。もし不合格の場合は再度ボルト径を大きくしてやり直します。

まとめ

アンカーの選定要領について解説しました。

今回は基礎に直接据え付ける場合の手順について解説しましたが、実際には防振架台、鉄骨への設置など様々な据付方法があり、それぞれまた違った計算方法で検討を行います。しかし、大きな考え方自体は変わらないので、場合に応じてアンカーにどういう地震力がかかるのか考えていく必要があると思います。

メーカーの耐震計算書を確認する際に今回のような考え方で計算されていると分かった上で見るのとそうでないのとでは全く理解度が違います。ぜひこの記事を参考にし、計算書を見ていただければなと思います。

また今回のアンカーの許容値は適切な環境、施工方法で施工された場合に発揮される許容値なので施工品質が悪ければ今回の計算自体なんの意味もなくなるのでアンカーの施工管理は非常に重要になります。それについても次回記事で解説していければなと思います。

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