この記事では、室内負荷のなかの一つであるガラス窓負荷の計算方法について解説します。
ガラス窓負荷について
ガラス窓負荷は透過による日射負荷と、室内外温度差による貫流熱負荷の二つがあります。透過日射負荷は冷房のみ計算し、ガラス貫流熱負荷は冷房、暖房の両方で計算します。それぞれについて説明していきます。
透過日射負荷 | 冷房のみ計算 |
ガラス貫流熱負荷 | 冷房、暖房で計算 |
透過日射負荷について
透過日射負荷は以下の数式で求めます。
- 透過日射負荷
qGR= IGR × SC × Ag
qGR:透過日射負荷[W] IGR:ガラス窓標準日射熱取得[W/m2] SC:遮蔽係数 Ag :ガラス窓面積[m2]
ガラス窓標準日射熱取得は、まず基本的にガラスに日射が当たると下図のような過程で熱取得となります。
- 日射がガラスに当たると透過する成分とガラスに吸収される成分に分かれます。(この時ガラスに反射する成分もあるが、熱負荷計算には関係がないので図示していません)
- 透過した成分はそのまま室内の熱取得となります。
- 吸収された成分は放射・対流によって室内の熱取得となります。(この時外部への放射対流成分もありますが、熱負荷計算には関係がないため図示していません)
つまり、ガラス窓標準日射取得はガラスを透過する日射による熱取得と放射・対流によって発生する熱取得の和となります。
ガラス窓標準日射取得は時刻、方位、地点、日陰かどうかによって異なります。
- 時刻・・・当たり前かもしれませんが、日の出とともに各方位について熱取得は大きくなっていき、日の入に近づくにつれて小さくなります。
- 方位・・・午前中は東側の熱取得が多く、午後は西側の熱取得が大きくなります。
- 地点・・・熱負荷計算を行う対象地点がどこなのかによって、時刻、方位による太陽の位置が変わるため、熱取得も変化します。
- 日陰の有無・・・日陰がある場合は天空日射成分のみになるので、直達日射がない分、値としては小さくなります。日陰がない場合は直達日射+天空日射成分になるので日陰ありの場合と比べて大きくなります。
以上のように熱負荷計算を行う際はどの条件の値を用いるかが重要になってきます。
基本的に最大負荷をもとめるために熱負荷計算を行いますが、午前中にピークが出るのか、それとも日中にピークが出るのか、建物用途等によってどの値を使うべきかを考える必要があります。
実際計算を行う際には各地点ごとのガラス窓標準日射熱取得がまとめられている表を参考に値を決定します。
外部遮蔽(庇など)がある場合には窓面積中の日陰と日なたの割合を太陽高度、庇の大きさなどから把握し、その面積率を標準日射熱取得の日陰と日なたの値に按分して計算を行います。
遮蔽係数はブラインド等による遮蔽効果を考慮した係数であり、3mm厚の普通ガラスでブラインドなしの場合を1とし、これを基準に係数が決められています。以下に具体的な条件と数値を示します。
3mm厚 普通ガラス ブラインド有(明色) SC=0.55
3mm厚 普通ガラス ブラインド有(中等色) SC=0.66
建築設備設計マニュアル 空気調和編 p97 参考
このように基本的にブラインドありの場合だと透過日射負荷は半分程度になることがわかります。
ガラス貫流熱負荷について
次にガラス貫流熱負荷について、下式で求めることができます。
- ガラス貫流熱負荷
qn= K × A × Δtn
qn:ガラス窓貫流熱負荷[W] K:ガラス窓の熱通過率[W/(m2・K)] A:ガラス窓全面積[m2] Δtn:室内外温度差
ガラス窓の熱通過率は基本的に窓周りの条件(ガラスの種類、サッシ、ブラインド)によって決定されます。以下に具体的な数値を示します。(基本的に安全側に見てブラインドなしで計算する場合が多い)
普通ガラス K=5.9[W/(m2・K)]
普通ガラス+内側ブラインド K=4.8[W/(m2・K)]
複層ガラス K=3.4W/(m
建築設備設計マニュアル 空気調和編 p98 参考
複層ガラスと普通ガラスを比べると半分程度違い、複層ガラスを採用することで貫流熱負荷をかなり抑えることができることがわかります。近年のZEB化の流れの中で複層ガラスのように空気層を含ませることで高断熱化を図り、熱負荷低減を図る試みも多く見られます。実際にこのような値の違いを見ると、なんでこんなに採用されいるのかがよくわかります。
ガラスを調べると三層のガラスを組み合わせたトリプルガラスもあるそうです。外皮の影響が大きい北海道ではZEBを達成するために採用されている事例もあります。蛇足でしたね。
まとめ
今回はガラス窓負荷について解説を行いました。ガラス窓負荷には透過日射負荷とガラス貫流熱負荷があり、それぞれ文献値を参考にしながら求めていきます。そのなかでガラスの条件や、方位の条件など熱負荷計算を行う条件を把握し、正しい値を用いることが重要であると考えます。
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