この記事では私が施工管理業務で体験したことをまとめています。
今回はターボ冷凍機を撤去し、空冷ヒートポンプチラーに更新する工事で既存の冷却水配管のルートを冷温水配管で利用するときに検討したことについて書きます。
あくまで一例として捉えていただければと思います。
現場の状況について
今回の工事は冷熱源であるターボ冷凍機、冷却塔その配管系を撤去し、既存の機器配置、配管ルートをそのまま利用し空冷ヒートポンプチラーとその配管を施工する工事になります。既存の支持や貫通部を利用できるので工事量や計画にかける時間をかなり減らすことができます。また既存の冷却水配管は硬質塩化ビニルライニング鋼管で新設の配管はステンレス鋼管で更新を行います。
同じ配管だろうと思っていましたが、管種、用途が変わるだけで納まりや仕様が結構変わることを身をもって体感しました。
検討事項について
更新前と更新後の配管の仕様の違いを以下に示します。
管種 | 用途 | サイズ | |
更新前 | 硬質塩化ビニルライニング鋼管 | 冷却水配管 | 150A |
更新後 | ステンレス鋼管 | 冷温水配管 | 125Su |
①冷温水配管と冷却水配管の外形寸法の違い
冷却水配管は基本的に保温しませんが、冷温水配管は保温をします。なので配管の外形寸法が大きく変わります。これによる弊害は既存の支持だと納まらない可能性があるということです。
今回の工事では冷却水配管が150A保温なし、冷温水配管が125Su保温ありなのでそれぞれの外径寸法は以下になります。これを見ると新設の冷温水配管の外径寸法のほうが大きくなっていることがわかります。これによる問題はさまざまあります。
配管外径 | 保温厚 | 全体の外形寸法 | |
冷却水配管 | 165.2mm | 0mm | 165.2mm |
冷温水配管 | 139.8mm | 40mm | 219.8mm |
既存のルートが使えない可能性がある
単純に外形寸法が大きくなるので納まらなくなる可能性があります。詳細なルートの検討が必要になります。最悪の場合、全ルートを検討し直さなければなりません。
バンドの固定位置が変わる
既存の鋼材には冷却水配管をバンドで固定するための穴が空いています。しかし外形寸法が異なるので新たに穴あけが必要になります。またもとの鋼材の長さが冷温水配管の外径より小さいとその鋼材を再利用することができなくなります。
②配管の伸縮について考えなければならない
更新前は硬質塩化ビニルライニング鋼管で冷却水系統での利用だったので、線膨張係数(単位温度変化あたりの伸縮量)が小さく、温度差(30℃程度)も大きくないため、配管の伸縮について考えなくてもよかったのですが、更新後はステンレス配管で冷温水系統で利用するため、線膨張係数が鋼管に対し大きく、温度差(45℃程度)も大きくなります。伸縮量によっては伸縮継手を採用する必要があります。これらを考慮しなければ最悪の場合、配管の割れなどを引き起こす可能性があります。
下記に参考として鋼管とステンレス鋼管の線膨張係数を示しておきます。
線膨張係数(10-6/℃) | |
鋼管 | 11.6 |
ステンレス | 17.3 |
もし、伸縮量を吸収するために伸縮継手を採用した場合、どのような施工上の問題が発生するのでしょうか?
固定点、ガイドを設けなければない
伸縮継手を採用する際、伸縮継手そのものはもちろんですが、固定点、ガイドを設けなければなりません。これは伸縮の方向を決めるために必要になります。下図にそのイメージ図を示します。
基本的に伸縮継手は固定点と継手間の配管の伸縮を吸収します。複式だと両方、単式だと片方の配管伸縮を吸収します。ガイドや、固定点は基本的に鋼材で固定するので、それに伴い、鋼材の新設工事が増えたり、納まりが変わります。元々の冷却水配管がかなり狭いルートを通っていた場合、ルートの見直しを検討する必要性があるかもしれません。
まとめ
今回は冷却水配管を同ルートで冷温水配管に更新する際の検討事項についてまとめました。
工事の概要:冷却水配管を冷温水配管に更新する工事。既設の冷却水配管のルートを利用し更新するので、既存の支持、貫通部を再利用できるというメリットがある。
更新の際の問題点と検討事項:
①冷却水配管と冷温水配管の外径寸法の違いから納まりが変わること
②ステンレス鋼管を採用するため、配管の伸縮量を検討しなければならないこと
現場の状況によってこれら以外の検討事項も出ると思うので都度都度考えていく必要があると思います。私個人としては系統や管種が変わるだけで、こんなにも検討事項があるのだなと感じています。
こんなの検討する必要あるのでは?とかあればコメントいただければと思います。
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