今回は設備機器に作用する地震力の求め方について解説していきます。この地震力はさまざまな要素によって決定されます。
この地震力をもとに機器据付のためのアンカーの選定を行います。
耐震計算書とかをみると数式がいっぱい並んでいて難しそうに感じるかもしれませんが、一個一個紐解いていくと結構わかったりします。それでは解説していきます。
設備機器にかかる地震力の求め方
設備機器の地震力の考え方
設備機器にかかる地震力の計算は基本的に局部振動法と動的解析によるものの二つがありますが、今回は局部振動法による求め方について解説していきます。これは機器の重心に対して水平方向と鉛直方向の地震力がかかるとして計算を行なっています。
水平方向と鉛直方向の地震力の求め方
水平方向の地震力は下式によって求められます。鉛直方向の地震力を考慮する場合はこれに0.5倍をかけます。
式(1) FH=KH×M×G
FH:水平方向地震力[N]
KH:設計用水平震度
M:機器の重量[kg]
G:重力加速度[m/s2]
重力加速度は9.8の定数で、機器の重量は採用する機器によって決まります。設計用水平震度はその建物の立地や耐震クラス、機器の設置位置によって決まる数値で、以下に解説していきます。
設計用水平震度の求め方
設計用水平震度は下式によって求めます。
KH=Z×ks
Z:地域係数
ks:標準震度
ここで地域係数とはその名の通り建物の立地する地域によって変わる係数で、本州(0.9〜1.0)、北海道(0.8~1.0)、九州(0.8~0.9)、沖縄(0.7)となっています。
標準震度は、建物の耐震グレード、機器の設置場所によって決まります。具体的に解説していきます。
建物の耐震グレードについて
建築の耐震グレードはS、A、Bの3つがあり、それぞれ以下の用途に適応されます。
耐震クラスS→災害応急対策活動施設などで、その機能を維持する必要があるものに適応
耐震クラスA→電算センターなどの社会的に重要な施設で、その機能を維持する必要があるものに適応
耐震クラスB→S、Aクラス以外の用途に適応
B→A→Sの順でグレードは上がっていき、求められる耐震措置のグレードも上がっていきます。
これらは特記仕様書などに記載されているので、選定の際は対象建物がどの耐震クラスに該当するのかを確認する必要があります。
機器の設置場所について
機器の設置場所についての区分は「上層階、屋上、塔屋」「中間階」「1階、地階」の3つがあります。この三つの中のどの位置に設置されるかで、設計に用いる値が変わります。
「屋上、塔屋」、「1階、地階」は一意に決まりますが、中間階、上層階は建物の階数によってその適応が変わります。基本的に上層階は下記のように定義され、上層階と「屋上、塔屋」、「1階、地階」を除く階が中間階となります。
2F〜6Fの建ての場合 | 最上階を上層階とする |
7F〜9Fの建ての場合 | 上層2層を上層階とする |
10F〜12Fの建ての場合 | 上層3層を上層階とする |
13Fの建て以上の場合 | 上層4層を上層階とする |
耐震グレード、機器の設置場所が決まれば下記の表を基に標準震度を求めます。
上層階に行くほど、求められる耐震クラスが高いほど標準震度が大きくなっていることがわかります。
クラスS | クラスA | クラスB | |
上層階 屋上 塔屋 | 2.0 | 1.5 | 1.0 |
中間階 | 1.5 | 1.0 | 0.6 |
地階 1階 | 1.0(1.5) | 0.6(1.0) | 0.4(0.6) |
以上によって求められた設計用水平震度を式(1)に代入して水平方向地震力を求めます。次にわかりやすさのため例題を通して実際に求めていきたいと思います。
例題
例題 東京に立地するビル(耐震クラスB)の屋上に100kgの室外機を設置するときにかかる水平方向の地震力を求めよ
まず設計用水平震度を求めていきます。
東京に位置するため地域係数0.9(本州)、耐震クラスはB、屋上に設置なので、標準震度は1.0となります。なので設計用水平震度は0.9となります。
次に機器は100kg、重力加速度は9.8m/s2、となるので求める機器に作用する水平方向地震力は882Nとなります。
まとめ
今回は設備機器にかかる地震力の算定方法について解説しました。
現場でアンカー選定のために地震力を算定することがあるかと思いますが、機器の重量や設置場所、耐震クラスなど当たらなければならない情報がわかっていただけたかと思います。
今後別の記事で地震力に対するアンカーの選定についても解説していきたいと思います。
今回の説明で出てきた耐震クラスは耐震支持の仕様にも効いてくるので覚えておいて損のない指標になるかと思います。耐震クラスによる耐震支持の違いについても今後解説していけたらなと思います。
勉強していて思いますが、耐震は奥が深すぎて、まだまだ知識不足だなと感じています。実際、どういうメカニズムでこのような式になっているのかまではわかっていません。これからももっと勉強して、良い情報を届けられるように頑張っていきます。ではまた。
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