この記事では、加湿、除湿にはどういう方式のものがあるのか、空気線図上でどういった動きをするのかがわかるようになります。
空調における加湿と除湿の種類
加湿、除湿の方式には数種類あり、どの方式かによって空気線図上での動きが変わるため、加湿、除湿の状態変化を扱う場合は、どの方式であるかを見極める必要があります。以下に主な加湿、除湿の方式を示します。
加湿の方式
- 蒸気加湿・・・蒸気を空気に吸収させる方式
- 水噴霧加湿・・・水を霧状にして空気に吸収させる方式
以上からわかるように主に、蒸気で吸収させるか、水で吸収させるかの違いがあります。
除湿の方式
- 冷却除湿・・・冷却コイル等の冷却により空気中の水分を凝縮させる方式
- 化学減湿・・・シリカゲルなどの吸着剤により、空気中の水分を吸収する方式
以上より、除湿には露点温度以下にして除湿するか、空気中の水分を化学反応によって取り除く方法があります。
加湿による空気線図上の動き
蒸気加湿と水加湿がそれぞれの空気線図上での動きを説明します。
まず加湿の線図上での動きを把握するため熱水分比 u の概念を理解する必要があります。
熱水分比 u は比エンタルピーの変化と絶対湿度変化の比率であり、湿り空気を出入りする水蒸気により比エンタルピーがどれだけ変化するかを示しています。熱水分比は以下の数式で表されます。
蒸気の場合は
u = 2501+1.805 ts
水の場合は
u = 4.186 tw
ここでts、twはそれぞれ、蒸気、水の温度[℃]になります。
この値によって線図上の動きが変わります。以下にそれぞれの方式の線図上の動きを説明します。
蒸気加湿
例えば熱水分比=2600の場合
①熱水分比の基準点から熱水分比2600の点に線を引きます。これが蒸気加湿した際の動きの方向になります。
②加湿する空気から①の線分と平行な線を引くとその線分の間に蒸気加湿した際の状態点があります。最終的にな状態点は加湿量によって決まります。
以上が蒸気加湿した場合の線図上の動きになります。
水加湿
例えば熱水分比が200の場合
①熱水分比の基準点から熱水分比200の点に線を引きます。これが水加湿した際の動きの方向になります。
②加湿する空気から①の線分と平行な線を引くとその線分の間に水加湿した際の状態点がある。最終的にな状態点は加湿量によって決まります。
水加湿の場合は、空気の熱を利用し、水を蒸発させるので、結果としてその蒸発熱により、乾球温度が低下するような変化をします。
除湿による空気線図上の動き
ここでは冷却除湿と化学除湿の空気線図上での動きを説明します。
冷却除湿
冷却除湿については冷却の記事で解説しているのでこちらを参照ください。
化学除湿
化学除湿は主に固体吸着剤を利用したもの、液体吸収剤を利用したものがあります。
固体吸着剤 | 液体吸収剤 |
シリカゲル等 | 塩化リチウム等 |
まず固体吸着剤を利用したものについて、シリカゲルを例に説明します。
シリカゲルを利用した場合、空気中の水蒸気を吸着させると、吸着熱を発生させます。
この吸着熱は水蒸気が水に変わるときに発生する凝縮潜熱とシリカゲルと反応する時の浸潤熱を合計したもので、水分1kgを吸着した場合の吸着熱は約2,970kJになります。
つまり比エンタルピーと絶対湿度の変化量の比である熱水分比が-2970kJ/kg(DA)になることがわかります。
線図上では以下のようになります。
除湿前の空気の状態点から熱水分比-2970kJ/kgと平行で、絶対湿度が減少、乾球温度が上昇する方向に動き、最終的な状態点は除湿量によって決まります。
次に液体吸収剤を使用したものについて、塩化リチウムを例に説明します。
塩化リチウムを利用した場合、空気中の水蒸気を吸収すると、吸収熱を発生します。
この吸収熱は固体吸着剤の時と同様に水蒸気が水に変わるときに発生する凝縮潜熱と塩化リチウムと反応する際の溶解熱を合計したものであるが、この溶解熱は凝縮潜熱に対して1%程度であるため、実用上は無視します。
つまり吸収熱は凝縮潜熱にほぼ等しいため、線図上では湿球温度一定の変化をします。
線図上での動きは以下のようになります。
除湿前の空気の状態点から湿球温度の線と平行で、絶対湿度が減少、乾球温度が上昇する方向に動き、最終的な状態点は除湿量によって決まります。
まとめ
加湿と除湿の方式には蒸気加湿、水噴霧加湿、冷却除湿、化学減湿の4つの主な方式があります。これらの方式によって空気線図上での動きが異なるため、加湿や除湿の状態変化を扱う際には、どの方式を使用するかを見極める必要があります。
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